野良馬ヒンヒン

思いつきを記録しています。下らぬものです。

円蔵さんを10年近く前に浅草演芸ホールで見た。

 

円蔵さんの演目中に、はとバスのお客さんがザワザワと席を立ち始めた。これはしかたがないことだし、いつものことだろうから、大抵演者さんも他のお客さんも、なんとなくやり過ごすのが、通常と思う。しかしその日は、はとバスのお客さんたちに聞こえるように、文句をいう一般のお客さんが一人居た。

 

はとバスの人たちには、どうしようもないことだと思うけど、一瞬空気がヒリツイた。そこで円蔵さんは演目から離れ、上手いこと、はとバスのお客さんたちの退席をフォローし、文句をつけたお客さんの立場も守り、小さなギャグを入れて予定外の笑いも取りつつ、さり気なく元の噺に戻っていった。その流れの自然さに舌を巻いた。これがプロなんだ、と思った。

 

自分には落語の話芸の上手い下手の基準はわからない。しかしその噺自体が大変楽しく、大笑いできたし、さらに客席のあしらいの上手さを目の当たりにし、さすが人気者として一時のテレビ・ラジオを覇した人だな、と思った。自分はリアルタイム世代ではないけど、ラジオで立川談志とのコンビでの丁々発止で、大人気になったらしい。さすが。

 

その円蔵さんが亡くなった。もう引退状態というのは知っていたけど、残念。マムシさんは、なんというかな。ただ喋ってるだけでも、絶妙な面白さ、楽しさや味わいがあった。それを演芸の楽屋言葉で「フラ」というらしい。・・・メガネ曇っちゃったよ・・・。

 

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