映画スポットライトを観ました。結論からして、素晴らしい。おすすめです。(ネタバレも少しあります)
実話。ボストンのカトリック神父による子供たちへの「虐待」の事実が、新聞社に舞い込んでくる。「スポットライト」という部署が取材を始めるが、多くの壁に阻まれる。
最初はその事実を怪訝に思うチームだったが、新任編集長に焚き付けられて、証言を集めるうちに、その闇の深さ、広さに愕然とする。
様々な妨害や非協力の前に立ちすくむ局面もあるが、チームは現実を少しずつ動かしていく。しかしあの出来事が、全てを止めてしまう。
映画には、直接的な虐待のシーンはなく、暴力もアクションもない。虐待をする側の視点からも被虐者の側の視点からも、描かれている部分はほとんどなく、その心理に対しては深く触れていない。客観的事実を集めて並べて世に訴えていく。却ってその方法をとるにより色々な間口を広げたるように思える。
つまりこれは虐待のドキュメンタリーというよりも、ジャーナリズム映画である。その題材として取り上げることで、この非道を映画として露わにしていく。
沢山の事実があり、それぞれにあまり深く入り込めない部分も多い。しかしたずさわる様々な人々のちょっとした呟きに深みがあり、もう一度観返したいと思わせる言葉が多い。虐待の連鎖を思わせるシーンもあり、また信仰と教会について考えさせられる言葉もある。
ある情報源からは、この背景には神父の妻帯禁止があり、神父たちの性的な精神年齢の低さを訴える。彼らが狙うのは、父親のいない貧困家庭の子供たちであった。ここには宗教の世界にもある格差が見えてくる。
教会の力の大きさにしり込みする法曹界や、長年にわたるジャーナリズムの認識の甘さも指摘される。小さな悪よりも全体の安穏を優先する地域社会もある。
こう書くと硬い内容で、映画としての面白さが無いようにも見えるが、実際はまったくダレルことのない二時間です。
主人公といえるのはスポットライトチームの四人であり、個人に特定されていませんので、チーム映画の昂揚感もあり、弁護士や裁判がかかわってくることによる法廷ムービーの面白さもある。様々な人の人生の一端が見え隠れする群像劇でもある。誰が見方で、真実はなんなのかを求めるミステリー的に牽引する味わいもある。
テーマの高さと、映画としてまとめる手腕の確かさが一致して、素晴らしい一本になったと思います。監督・脚本はピクセル、ミリオンダラーアームのトム・マッカーシー。アカデミー賞で作品賞・脚本賞受賞。また実在のチームはピューリッツァー賞を受賞した。
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以下が無粋な今年観た映画の個人的順位です。
1 オデッセイ
ディーパンの闘い
スポットライト
4 ブラックスキャンダル
ブリッジオブスパイ
ザ・ブリザード
7 スターウォーズ
8 ドリームホーム