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1995年2月号の文芸春秋マルコポーロは「ナチガス室はなかった」というセンセーショナルな特集が問題を呼び、その後の廃刊につながった。
自分はその号を持っていたのだが、後輩に貸したままそれきりになってしまった。きっとその価値は理解されず処分されてしまったろう。
そんな注目を集めた号だったが、しかし当時自分が気になったのはその大特集の後の「松本サリンはテロだ」というやや小さな特集だった。河野さんと対談したアメリカの化学兵器の専門家は「犯人はこの後、もっと大きなテロを起こすだろう」と予言していた。
そしてその直後のページにオウム真理教の記事が並んでいた。なんとなくその並びが唐突に感じた。しかも、直接松本サリンについてではなかったと思うが、オウム真理教に関してなんらかの関連の捜査が行われているのでは、と憶測しているような内容だったように覚えている。それが妙になにか匂わせぶりに思えた。
そしてその二か月後、あの事件は起こった。予言は当たった。
地下鉄サリンの後、オウム真理教に捜査が入ったのはとても早かったと思う。
wikiによると二日後には捜査に入っている。
もしかしたら松本サリンはオウムがかかわっているというのは、警察もマスコミの一部も分かっていたのではないだろうか、というのがその時の自分の感想だった。
だから
マルコポーロは事前にあのような並びで、二つを結び付けていた。
警察は地下鉄テロの後、すばやくオウムへむかった。
マスコミはその捜査を中継放送した。
もし
松本サリンに対する捜査がもっと早く適切に行われていたら
もし
松本で別人を犯人として目星をつけず、もっと早くオウムにむかっていたら
と思う部分もある。
仮にマルコポーロが本当に松本サリンとオウムを結び付けていて、その上であの予言を発行したとしたら、あの事件に警鐘を鳴らしていた唯一と言えるのではないだろうか。
いや、逆にこの特集が彼らの作戦を急がせたかもしれないと思うといまでも背筋が寒くなる。
あの号は、ガス室関連の問題で、すぐに回収されたらしい。だから松本サリンの特集とその後のオウムの記事は多くの人の目に触れていないはずだ。予言が的中したことは話題にならずに忘れられた。