アマゾンプライムビデオから「オリーブ・キタリッジ」を選んで観てみた。
結論は、面白かったという以上に見応えがあった。しかし広くお勧めするわけでもない。
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地味なドラマである。
ニューイングランドの海沿いの田舎町の夫婦の話で、妻が主人公のオリーブ。中学の数学教師。堅物で、傲慢といえるほど頑固。学校でも生徒人気がなさそうだけど、家に帰っても夫に不平不満、嫌み、皮肉の連打。自分の教える学校に通う反抗期の息子をガミガミこき下ろし、ビンタで折檻。とても親近感は持てない。
観る側に救いなのは小さいながら薬剤店経営者の夫。穏やかで優しくて、お店の客さんにも親切。妻にも従って、合わせてくれている。多くの人は主人公よりも、この人のファンになるのではないだろうか。
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以上が設定。そしてドラマチックなことはあまり起きない。少し起きるんだけども劇的な解決には至らない。消化不良というよりも「そうだよね、普通はそんなもんだよね、映画やドラマは大げさだからね」と納得し、顛末に共感する。非日常の出来事に巻き込まれるスターを観てわくわく興奮するというよりも、画面の中の登場人物をいつの間にか隣人として観ている感覚。
フィクションなのだけど、テンションは上がらない。出てくる人も癖はあれども、普通の人の範疇だ。無理に盛り上げないのがこのドラマの基調となっている。なのに観てしまう。なぜだ。
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我々は実際の自分の隣人をよく知っているだろうか。よく知らないから特に関心も興らないという面はないか。興味をひかない人でも、生活ぶりや内面をよく知る機会があれば、その人に心を寄せることもあるだろう。
夫やそのほか登場自分物も味わいがある描き方をされていて、誰もがなにがしかの意味を持っているように見える。地味で平凡な人々なれど、知るほどに
なかなか食えない主人公なれど、人となりや周囲の人を良く知るようになると、この家族の行く末が気になる。主人公よりも、この家族のリアリティやこの物語全体に向き合ってしまう。
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日本だと、向田邦子や山田太一や木皿泉だろうか。いやそれよりもドライで辛口だ。 最後の最後まで、劇的なるものを避けて、それでいて見応えを作るという、アンチドラマチックなドラマ。お見事。
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海外のホームドラマは生々しい生活感の描写が面白い。これもその一つ。