オリジナルよりも、スマートで紳士な感じの「生きる」という感じでした。
元祖の持つ匂い立つような剥きだしの生命力みなぎる戦後感は当然ないのですが、イギリスの古い役所や役人の仕事・生活はこうなんだなと識る喜びがありました。映画の中に異国の生活のディティール感を求める人には良いと思います。
特に背広。スーツ。これが好きな方にはたまらないでしょう。山高帽をかぶった英国紳士たちの仕立ての良さそうなスーツ姿が佃煮の詰合せのようにスクリーンに登場します。
本来ドラマティックなはずのストーリー展開も、極端に寓意的な黒澤版よりは穏やかに演出されております。
イギリス映画らしく(?)美男美女総出というよりは、やや地味目な人たちがジワジワと魅力を出してくる役者さんぞろいです。ちょっと宇津井健ふうの主役のビル・ナイも然り、サバンナ高橋ふうの助演のアレックス・シャープも然り。
日本版で主役に精神的再生を与える「小田切みき」役にあたる「ミス・ハリス」のエイミー・ルー・ウッドも、美形ではないけどとても魅力的。主役の元上司にきちんと意見をするという良い役を演じておりました。
最後に流れが反転する部分もソフトで、これはこれで後味が良かったのだろうと思います。