野良馬ヒンヒン

思いつきを記録しています。下らぬものです。

名もなき光

町で偶然近所の人と会った。

といっても、いくつか言葉を交わしただけ。

こちらは向こうを覚えていたけど、向こうはそうではない。

 

その人は10年近く前に、脳の病気をされた。

その頃は歩くのも不自由で、500mほど離れた場所に買い物に行くのもようやっとだった。

ひょんなことで少し会話をしただけだけど、辛い予後が伝わった。

 

元気なころにも見かけていた気がした。

溌溂とした人だった気がした。

 

しかし毎年一二度見かけるたびに、身体は良くなっているようだった。

4年ほど前には、大分歩けるようになっており、普通に外出もできるようだった。

 

その後、見かけずにいた。また悪くなってしまったのだろうか、どこか施設にでも行ったのだろうか、と思っていたら、今朝近所で見かけて、また偶然にも少し会話をした。向こうは覚えてないだろうけど、こちらはすぐに分かった。勝手に安堵した。片足を引きずる後姿を見送った。

 

どれだけ辛い哀しい毎日だったろう。今でもそうかもしれない。

夜などつぶされるような不安だろう。

家族はいるのか。

友達は助けてくれるのか。

 

コツコツとリハビリされたのだろうか。

あれは辛く長いという。

努力家なのだろうか。

 

この数日滅入るようなことばかりが続いて、明るい気持ちになれなかった。

それでもあの姿から、勝手ながら少し光を分けてもらった気がした。