子供のころ、商売をやっていた家庭だったので、年末は大忙し。
クリスマスなんてやったことないどころか、小学二年生まで知らなかった。
幼稚園などで行事をやっていたのかもしれないが、気にとまらなかったのだろう。
8歳の冬の日、友達の家に行くと、新しいゲームがある。
アスレランドという立体ボードゲームだ。
いいなー、おもちゃ買ってもらえて、というと、
クリスマスだから君のところも買ってもらえばいいのに、という。
なにそれ、と聞くとそこのお母さんと共に驚かれ、教えられた。
家に帰って聞くと母親は少し動揺し「家は仏教だからやらない」という。
その後も毎年、ケーキもない。
もう少し年長になると、どうも仏教だからというのは方便で、店が忙しいのだ、と気づく。とくにケーキ類が好きなわけでもないので、どうでもよかった。年末は店屋物で済ませる夕食も多く、むしろ好きな物を選べて嬉しいくらいだった。
ただ、正月になると、お年玉のほかに好きなおもちゃを一つ買ってもらえた。あれがクリスマス代わりだったんだなー、と思う。
昭和の昔の、あの飛び回るような年末の忙しさを、夜遅くまでの商売だけでなく、家事や子育てまでこなしていた母親はスーパーマンだったのだろうか、と思う。育ててくれてありがとう。生涯充分なお返しができそうにないけど。