中学時代に洋楽にかぶれ始めた自分は、同時期の日本のアイドル歌謡曲をどうも好きになれなかった。でも今聞くと懐かしいし、ああ職人が高度なことをやってるんだろうなーと感心したりする。
先日NHKの筒美京平特集を視ていた。80年代には筒美京平はやっぱりアイドル歌謡で名曲を連発していて、特に関心のなかった自分でもすべて口ずさめるほどの大ヒットばかりだった。
おそらくチェッカーズでヒット曲を連発した芹澤廣明に触発されたのだと思うが、筒美もCCBに曲を書き実質的プロデュースをした。番組の中で詞を提供した松本隆も、筒美さんはおそらくバンドのプロデュースをしたかったのではないかと話していた。松本が引き合いに出したのは、最新機材のシンセサイザーサウンドを前面に世界を席巻した同時代のイギリスのニューロマンティック系のバンドだった。
フィフティーズのロカビリー/ロッカバラードをベースに愛くるしいチェックの揃いの衣装のチェッカーズに対し、最新サウンドとクールなビジュアルで対抗したかったのかもしれない。
その件りでCCBのライブ映像がチラッと映っていたのだけど、これが瞬間にグルービー! と思ってしまった。たしかその中ではドラムもエレドラではなく通常のセットのようで、このドラムと渡辺氏のチョッパーベースが絡むと何とも言えずカッコいいボトムだった。それも二人ともかなり歌いながら。ギターもキーボードも上手い。
おそらくフュージョンに憧れた世代の若い人たちが、企画上アイドルバンドをやっていたんだろう。そこに笠氏のピッチが抜群な高音の美声が筒美メロディーに載って完成したのだと思う。自分の好みからは遠く離れた音楽だったけど、今思うと職人たちがシーンに向けて、敢えて下世話に盛り上げたという価値が分かる気がする。