非正規が零細自営業に
選挙前ということで、主に野党周りに最低賃金アップの話題が多い。
非正規労働に対して、1,500円の時給は多くの企業で事実上難しいと思う。その上でもし、その額が最賃の時代が来たらどうなるだろう。逆に非正規にすらなれない人が増えるのではないだろう。
土建業界の一人親方みたいな零細自営業が増えるかもしれない。企業側が、もう時給雇用での契約は無理だけど、下請けとしてなら仕事を与えますということになると、同じ労働でも労働者としての保護は働き手から取り上げられる。
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同じ経営者同士の商取引だから買いたたかれるかもしれない。下請け保護の法律もあるだろうけど、労働者ほどの保護はされないだろうし、同じような競争相手との競合の中、泣き寝入りもあるだろう。
さらに来年からインボイスの導入で、消費税も納めなくてはならない。これまでは一人親方のような立場を保護する意味合いもあったろうけど、これからは売上1,000万円以下でも消費税を納めることになり、単純に手取りは一割減になる。
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戦後すぐまでは日本は、多くの人が自営業だった。つまり農家や漁師や職人だった。しかしアメリカは資本主義拡大のために工業化し株式会社を定着させた。すると会社ごとに一括で税金を集めることができる。
自営業者を減らせば確定申告が減り、税務行政も楽である。だからこれまでは自営業者が増えるのは行政負担増になるので、困ることだった。
しかし近年のデジタル行政の発達で、マイナンバーやeTaxが充実し使いやすくなってきた。労働世代のほとんどの人が手のひらサイズの通信可能コンピューターであるスマホを持っている。アンドロイド向けのeTaxアプリもリリースされた。
こうした発展で簡便な確定申告が可能になりつつある。申告アプリを請負先や銀行口座と紐づけすれば、経費控除を入力するだけで引き落としまで自動になるかもしれない。
ネットショップから購入したものは電子帳簿保存をする義務が来年からできるので、徐々に経費も紐づけされるのだろう。そうしたらほとんど自分で手間をかける必要もない。
移民政策を与党が進めるのも関連があるだろう。日本に来たがる移民はいないという説もあるが、まだまだ貧困や政治不安定の国なんていくらでもある。次世代はそういう競争の中に入っていくのだろうと思うと暗い気分になる。
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そもそもが最賃の議論の前に、安定した身分である正社員の枠を拡大するべきという問題があるのだが、「最低賃金」というキャッチーなワードに皆が引っ張られすぎている。むしろ事の本質は隠されてしまった。
最賃運動から非正規の縮小へ、さらにその下層が現れるかもしれない。いやもう現れている。ウーバーイーツである。