今年の四月二十日でコロンバイン高校の事件から20年経ったという。
その二人の犯人の同窓生だった人の書いた本を読んだ。彼から見ると主犯と見られるエリックはトラブルメーカーで困った存在だったが、従属的であった共犯者のディランは近年までは親友だった。
事件の起こる少し前、エリックは自ら起こしたトラブルを起因に、著者とその家族を逆恨みし、凄惨な方法での殺害予告をネット上で行っていた。著者家族は20回以上通報したが、警察は動かないという緊張状態が続いた。それなのに若者ゆえの気まぐれか、二人はひょんなことから仲直りする。この関係修復を両親は訝っていたが、結果として著者を救うことになる。
事件当日、著者は屋外でタバコを吸っていると、仲直りをしたエリックが大きなバッグを運びながら「お前の事を好きだから、ここを離れろ」と言うので、これに従い一命をとりとめた。バッグには武器が入っていたことを後から知った。
エリックとディランの行動の原因は高校でのいじめに対する反撃行為であったとされている。
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事件後、警察は著者も共犯ではないかと疑い、メディアで実名を度々挙げた。著者はエリックから殺されると20回以上も警察に通報していたのに。それでいて自分たちは捜査もしなかったのに。その時点で捜査していたら、事件を止められていたかもしれないのに。警察のこの行為により著者家族は、近隣住民や被害者遺族から長く白眼視を受けた。
犯人グループ二人は銃器を三人から調達していた。ピザ屋の同僚の一人から購入し、もう一人の同僚には代理購入を依頼した。さらにディランを慕っていた女性にも代理購入を依頼した。彼女を通じて手に入れた銃器が最強の威力をもっていたが、ピザ屋の二人のみが罪に問われ刑に服した。
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さらにネットを見てみると、ある男性の名前が登場する。
スクールカーストのトップグループのジョック(運動部)の中心であった男。この男が凄惨ないじめを犯人グループの二人にのみでなく、校内で広く行っていたという。この男の存在がなければ、この事件は起こらなかったのではないかという感もある。
元々アメリカの学校は、スポーツ優秀者を過剰に賛美し特別扱いする文化があるらしいが、殊更コロンバインではその傾向が強く、レスリングとフットボールの有名選手であったこの男の行為をとがめる教師もいなかったらしい。
この男の事を調べると、コロンバインに入る前にすでに警察沙汰を複数回起こしていた様子もあり、またDV家庭で育ったような記述もある。さらに事件後雲隠れしたこの男を指弾し、探し出そうというサイトもある。だが、なにせ全て英語なのでこちらの読解力ではこの男に関する情報の正確さは心もとない。
またなぜこのような選手が幅を利かすのかというと、アメリカの教育界では好結果を出すスポーツの監督や顧問が出世しやすいという事実があるためだという。であれば出世を狙う上司の秘蔵っ子を注意し指導する教師は少ないのだろう。スポーツ偏重主義の結果による惨劇とも言えなくない。
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ただ、これだけはっきりネット上で非難されているものの、著者の本の中にはこの男の存在は現れない。ネット上での都市伝説やミームのような類なのかもしれないが、これ以上は分からなかった。