中学生のころは、二週間に一度FM雑誌を買うのが楽しみだった。
FM fanと週刊FMが渋くて大人っぽくて好きだった。
どちらかを選んで買った。
FM雑誌というのは、コンビニで買える音楽情報誌だった。
各音楽ジャンルの専門雑誌に出会うまでは、自分にはラジオとそれが音楽情報のすべてだった。
今ネットで音楽情報を探る人たちも、以前はFMラジオを聴いて、
場合によってはカセットテープで録音した。
これをエアチェックといって、音楽好きは結構みんなやっていた。
新聞のラジオ欄より早く二週間分の番組スケジュールを見るためにFM誌はあった。
FMfanは、格調高い感じの誌面が落ち着いていて好きだった。
大人向けだったと思う。
鮎川誠氏と東ひさゆき氏のチャートボムという対談コーナーが楽しかった。
東さんは
ここで書いてらっしゃるようだ。
週刊FMはもう少し若い購買層を意識してたと思うけど、
浮かれた感じがなく、正統派だった。
カセットテープのインデックスカード(ジャケット・表紙のようなもの)
が毎回付いてきて、これがしゃれたデザインで素敵だった。
各雑誌でそのセンスが違うのだけど、週刊FMは海外の何気ない風景だとか、
大人っぽかった。絵でいうと印象派っぽい(よくわからん)。
なんとなくあの頃はみんな無邪気に外国に憧れていたのだ。
そのころの空気みたいなものが写っていたように思える。
取っておけばよかったなぁ。
レタリングシートとかで複写してアルファベットでタイトルを書いたりした。
この雑誌が一番好きだったかも。
週刊FMは特に年に一二度、付録が付くのが楽しみだった。
名盤300! とかが中綴じに付いてきた。
それでポップ音楽の流れが大体把握できた。
今でもあれを読みたいなーと思う。
もうとっくにどっか行っちゃったけど。
FMレコパルとFMステーションは表紙が軽薄でミーハーで
今一つに思えて買わなかった。
FM雑誌はポピュラーからクラシック、ときには伝統的な邦楽まで含んでいたので、好き嫌いなく音楽に興味を持つきっかけになっていたと思う。
ステレオの記事から電気やスピーカー工作に興味を持ったり、
昭和の男子の趣味雑誌という感じがした。
昔は音楽を自由に聴くことがなかなか難しかった。
ラジカセすら手に入れるのに大イベントだった。
そこに貸しテープ屋から借りてきたテープをダビングしたりして、
自分のものにした。
LPレコードを買うのは、本当に晴れがましかった。
めちゃめちゃ吟味して、一度聴いて失望しても、
好きになるまで繰り返し聴いた。
FM雑誌でラジオ番組追いかけて、録音したり、レタリングしたり手間がかかった。
すると愛着というものが沸くのだなぁ。きっと。
手に入れるのが難しかったりすると、そこには手に入れるまでのドラマや想いが付着する。そしてそれは他人にはわからない自分だけの価値なのだ。周りにどう思われるとか、一般の評価とかは関係ない。それが愛着だ。
もしかして、今の世の中に足りないものは、愛着なのかもしれない。
スペックは愛着を産まないのかもしれない。
スペックより愛着。