「実はデモテープが一番素晴らしいんだ」
80年代頃、ポール・マッカートニーがやや不調の時代に、関わったプロデューサーがこんなことを言っていた。
その人がだれか忘れてしまったけど、ポールがギター一本、ピアノ一つで弾き語ったデモテープは素晴らしいのに、完成した音源は様々なアレンジをやりすぎて散漫になってしまうとのことだったと覚えてる。
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確かにその他のベテラン大物アーティストでも、新譜を出すとちょっとアレンジ過剰なのではないかと感じることがある。
大物になれば、何でも話が通ってしまい、無理です、と止められることもないのだろう。
彼らの若い頃は今より機材の自由が利かず、予算やスケジュールなど様々に制約があり、その中でより良いものを作っていたのだろう。制約が溢れ出る創造性をまとめていたのかもしれない。
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ポール以外にも90年代以降の井上陽水や、近年の細野晴臣も少しアレンジ過剰かなという気がする。この三人のデモを聴いてみたいなあ。
もしかしたらベテランが額縁に凝るのはよくあることなのかもしれない。焦りだろうか。自分はまだ新しい時代や新しい趣向に付いていけている、と確認するのだろうか。
一般人でもこういうことってあるんでしょうかね。天才児たち故に、まだまだ、もっともっととオーバーリーチするのでしょうか。