小学校低学年のころは毎週土曜日のドリフの8時だよ!全員集合が楽しみだった。視聴率100%男の欽ちゃんの番組もまだまだ大人気だった。
小学校三年生の夏休みにひょうきん族に出会ってからは、ビートたけしファンになり中学校の途中までそれが楽しみだった。小学校五年のときに笑っていいともが始まり、密室芸人だったタモリが表舞台でブレイク。
中学校になるととんねるずが大人気。高校時代までよくテレビで見た。明るいアナーキストといった風の人気者には、全国の若者が動向を注視せざるを得ないようなカリスマ性があった。
90年代に入り、大学生になるころにはダウンタウンが大きく人気を伸ばした。とんねるずよりも昏い目のサディスト的な笑いは、それまでの陽気なバラエティの角度を大分変えたと思う。
近年はとんねるずの笑いはハラスメント芸だといって批判されるけど、DTの番組はそれ以上に人間性を疑いたくなるようなネタがいっぱいだったと思う。それを見てみんな笑っていたんだから同罪だけど。
90年代後半になるとそれまで低迷していた爆笑問題が念願のブレイク。これも太田光の暗さや人間不信からくる違和感が源になっていて不思議な対称性であった。松本人志にはない文学的な知性に惹きつけられた人も多かったろう。
たけしは映画に夢中だったようだけど、このころはまだBIG3も元気で存在感も強く、その他にもウッチャンナンチャンやボキャブラ芸人、ナイナイなどの元吉本天然素材組も現れて、まさに百花繚乱であった。
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たけし、タモリから爆笑問題までは、他人や社会の約束事・建前を嘲笑い、ぶち壊すという破壊芸だった。それによって日本人の感覚も大分変っていった。たしか欽ちゃんはたけし以降、日本人の感性が変わったと言っていたと思う。
壊すことにカタルシスがあるのだろうけど、もうこれ以上壊せないところまで来てしまった感もある。ポリコレという新しい建前は世界的なもので、歯が立たないようにも見える。
おそらく少しエグみのある笑いはBSやCS、ネット番組に流れていくのではないか 地上波はまた建前の多い、上品で清潔な笑いに戻っていくのかもしれない。それもむべなるかな。そのころ日本人は何で笑っているのだろう。